「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」その2
『My Funny Valentine/マイルス・デイヴィス』
断片的なメロディーに曲のエッセンスを凝縮
マイルス・デイヴィスの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は2ヴァージョンある。ひとつは1956年の『クッキン』収録ヴァージョン。これもいいけど、ここではアルバム・タイトルになっている64年『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』収録ヴァージョンを紹介したい。ハービー・ハンコック(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラムス)という、当時最先端を行く若手を従えたバラード・プレイ。テーマのメロディーはほとんど断片のみ。コード進行もどこ行ってるのかわかんないぐらいに休んだりしながら、マイルスは感じるままに(?)「歌い上げる」んだけど、それをバックアップする3人がすばらしい。テレパシーで交信してるんじゃないかと思えるぐらいの緊密感。テナー・サックスのジョージ・コールマンもソロをとるけど、全然印象に残らないぐらいマイルスの部分が強烈な印象を残す。そう言えば「マイ・ファニー~」のメロディーはほとんど出てこなかったな、と聴き終えると気がつくんだけど、曲の印象は濃厚な「マイ・ファニー~」なんだな。「こりゃスゲー」と絶句するマイルス美学とバンドの実力が凝縮された名演。
写真2:『My Funny Valentine/マイルス・デイヴィス』(Sony)