



mf-0323さん、いらっしゃいませ。
世の中に楽器の種類はいくつあるのか想像もできませんが、ジャズほど「何でもOK」というジャンルは他にはないと思います。ジャズではさまざまな楽器での演奏が試みられてきました。クラシックの独奏で使われる楽器ならほとんどあるのではないでしょうか。ここでは「アドリブ・ソロができる楽器」という観点から紹介していきましょう。
「あの楽器で!?」というのにはふた通りあると思います。ひとつは「ジャズでは珍しくないが、他のジャンルではあまり使われない楽器」。もうひとつは「ジャズではあまり使われない楽器」。
まず、前者ではバス・クラリネットですね。先端も終端も曲がっている、あの長いクラリネットです。クラシックや吹奏楽では低音部を受け持つ目立たない楽器ですが、ジャズでは1960年代にエリック・ドルフィーが積極的に使うようになってからフロントに立つ楽器となりました。バス・クラがバリバリと吹きまくる音楽はジャズだけではないでしょうか。フラジオ(倍音を使って高音を出す特殊奏法)を駆使し、幅広い音域で暴れまくるドルフィーの演奏は実に刺激的です。ドルフィーもそうですが、楽器構造が近いサックス奏者の持ち替え演奏が多いです。でも不思議なことにアルト・クラリネットはほとんど使われていません。

さて、次は「ジャズではあまり使われない楽器」。こちらが本題ですね。まず、質問にあったホルン(フレンチ・ホルン)ですが、これはかなり珍しい部類です。よく知られているのはジョン・クラーク(というか唯一かも)。フランコ・アンブロゼッティ(トランペット)の『Gin And Penta Tonic』(Enja)などで、アンサンブルやソロが聴けます。クラークは「ジャズの人」ですが、クラシックからの「越境もの」では、バリー・タックウェルがジョージ・シアリング(ピアノ)と『Play The Music of Cole Porter』(Concord)というアルバムを出してます。
チューバはどうでしょうか。1957年にレイ・ドレイパーが、その名も『Tuba Sounds』(Prestige)というアルバムを録音しています。それまではベースの代用という使い方しかされてこなかったチューバですが、ここではソロ楽器です。注目をあつめたのでしょう、翌年にはジョン・コルトレーン(テナー・サックス)も入った『A Tuba Jazz』(Jubilee)も作っています。もっと後の時代では、1982年録音のジャコ・パストリアス・ビッグバンド『TWINS I&II』(Warner Bros.)で、デイヴィッド・バージェロンがソロでブリブリ吹いているのが聴けます。ちなみにバージェロンはトロンボーンとの持ち替えだけど、マウスピースが近いからってことかな?
で、このアルバムなんですが、他にも珍しい楽器が入ってます。そもそも、エレクトリック・ベースがリーダーでソロをたっぷりとるビッグバンドというのが他にはないものですが、チューバの他、スチール・ドラム(スチール・パン)やハーモニカがフィーチャーされています。どちらもすごいテクニックでアドリブしています。ちなみに、このアルバムでは聴けないけど、ここに参加しているサックス奏者のボブ・ミンツァーはエレクトリック・バス・クラリネットも操る人。ジャズではそういうのもアリなのです。どんな音か想像できる?

どんどん続けます。コントラバス・クラリネットというとてつもなくデカいサイズの、とてつもなく低い音を出す楽器があります。存在自体が珍しいと言ってもいいと思いますが、これでピアノ・トリオをバックにスタンダード・ジャズをやってるアルバムがあるのです。実は「Q9」でも紹介しているんだけど、アンソニー・ブラクストンの『In The Tradition』(Steeple Chase)のシリーズ2枚。「ブバブバババブブブブ…」と音色自体からして強烈に刺激的です。
最後はスチール・ギター(ペダル・スチール・ギター)。カントリーやハワイアン・ミュージックで使われる、スライド・バーを使って持続音をゆったり聴かせるあの楽器ですが、これでジャズをやっているアルバムがあるのです。1963年録音の、その名も『Steel Guitar Jazz』(Mercury)。奏者のバディ・エモンズは知る人ぞ知る「スチール・ギターの帝王」。「チェロキー」などのジャズ・スタンダードを、フレットがないにもかかわらず、すごい速さで弾きまくっています。でも皮肉なことに、うまいが故に(油断して聴いてると)楽器としては普通のエレクトリック・ギターに聞こえてしまうこと。うまけりゃいいってもんじゃない?

これらの他にも、バンジョー、ハープ、シタール、バグパイプ、ウクレレ、尺八などなどいろいろあるけど、また今度。 <以上>
