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VICTOR JAZZ CAFE

2007年01月

ソニー・ロリンズ 『ソニー・プリーズ』 2007年1月

2007.01.01 VICJ-61396

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Artist Review アーティストレビュー

 ロリンズの新作が出ると聞いて、実は複雑な心境。2005年の来日「ラスト・コンサート」はすばらしかったと聞くが(ああ、行けなかった...)、その後は 引退予定という告知もあった。これまで5年間アルバム・リリースなし、最近奥さんが亡くなったという悲しい知らせもある。そんな状況での新作。オレのヒーロー、ロリンズは今どうなっているのか。さらに、これはロリンズの自主制作レーベル「DOXY」からのもの。30年以上もつき合いのあったレコード会社か らどうして今離れたのか。うーん...。

しかし、1曲目のイキのいいビートにのるブロウ一発を聴いただけで、余計な心配をした自分を恥じた。ロリンズ様すいません。こりゃすごいぞ、というのが第一印象。強烈に元気で、しかもサウンドもフレイズも勢い良く新鮮だ。これで引退? そりゃないよ。で、最新情報をチェックするとヨーロッパのツアーもあるようだし、どうやら完全引退というわけではないらしい。ただし日本にはもう来ないが(ああ、行けなかった...)。 それはさておき、確かに引退したっておかしくない歳ではある。1930年9月ニューヨーク生まれの76歳。日本式に言えば昭和5年生まれの午年。それでいてこのバリバリの演奏。すごいおじいちゃんですよ。失礼ながら高齢の方だと「その年齢にしては」というフィルターをかけちゃうこともあったりするけど、ロリンズには不要だね。20年前から年とってない感じだ。そういえば主要メンバーも20年前と同じだな。まさか20年前の音源? それは冗談。では1曲めから聴いていこう。

TRACK LISTING
1.ソニー・プリーズ

ロリンズにしてはめずらしい、コード・チェンジのないいわゆる「1発もの」。ベースがずっと一定のパタンを刻み続け、ドラムスとパーカッションがキレのいいビートを叩き出す。ロリンズはバリバリ。後半ではかなりフリーなフレイズも飛び出してくる。元気過ぎだよ。もちろん大歓迎。東京公演ではこれがオープニングだったんだって。盛り上がっただろうなぁ。終演後、これが収録されているアルバムはどれかって問合せが殺到したらしい。

2.サムデイ・アイル・ファインド・ユー

イギリスの劇作家・作曲家・俳優ノエル・カワード作曲のバラード。ロリンズは1958年の『フリーダム・スイート』で一度とり上げている。スロー・バラードを吹くときは、トロンボーンのカウンター・メロディを入れるのがロリンズの定番アレンジだけど、これもそう。クリフトン・アンダーソン(ロリンズの甥っ子ね)とのコンビも80年代からだから、ふたりの呼吸がすごく合っている。聴くとほっとするところがあるね。

3.ニシ

この曲名は日本語の「西」?と思った人、正解です。ベーシストの西山満さんのことです。大阪を拠点に活躍する大ベテランでロリンズとも親交が深いらしい。ロリンズの05年の大阪公演ではオープニングで演奏され、大阪では大いに盛り上がったという。ロリンズらしい躍動感あふれるブルース・ナンバー。バリバリ吹きまくるロリンズは快調そのもの。

4.星へのきざはし

ここでも、クリフトンがカウンター・メロディを吹く。アップ・テンポとスロー・ナンバーが順番に登場して、いい感じの変化でアルバムが進んでいく。ストップボタンを押せないよ。ところでこの曲はグレン・ミラーからビル・エヴァンス、ウェス.モンゴメリーやらの演奏でよく知られているスタンダードで、原題は「Stairway To The Stars」。「きざはし」って「階段」のことなのね。知ってた? でもなんでこんな難しい日本語題になっているのかは調査中。ちなみにポップスのニール・セダカのヒット曲でやはり「星へのきざはし」というのがあるけど、これは「Staieway To Heven」という別曲。もちろんレッド・ツェッペリンの曲とも違う。余談ばかりでごめんなさい。

5.リメンバリング・トミー

ミディアム・テンポのちょっと寂しげなメロディ。この「トミー」は2001年に亡くなったピアニストのトミー・フラナガンのこと。フラナガンはロリンズの代表作『サキソフォン・コロッサス』で共演していることで知られるが、そのアルバムはトミーにとっても飛躍のきっかけとなった1作だった。『サキ・コロ』は 1956年の録音。ジャズ・ファンなら一度は耳にしているであろうモダン・ジャズの有名盤だ。録音して50年の間ずっと「名盤」として聴き継がれているのはすごいことだなあ。<『サキ・コロ』50周年記念曲「オレはトミーを忘れない」>と勝手に日本語タイトルをつけさせてもらおう。ロリンズとフラナガンは 80年代、90年代にもアルバムで共演している。そういえば、今回のアルバムはピアノがいない。またまた勝手にトミ・フラのピアノをアタマの中で重ねさせてみた。

6.セレナーデ

イタリアの作曲家リカッルド・ドリゴ(1846-1930)が書いたバレエ音楽「百万長者の道化師」の中の1曲。「ドリゴのセレネード」というタイトルでも知られている。あまり馴染みがないよね?ジャズでとり上げるのはめずらしいものね。なんて、実は僕も知らなかったよ。

7.パーク・パレス・パレード

いかにもロリンズらしいカリプソ風ビートとのんびりしたメロディ。のびのびとした大らかなソロもいかにも。こうして聴いてくると、気迫のインプロヴァイザーであったり、陽気なおじさんになったりとロリンズはいろんな顔を持っているよね。

 と、1曲めでグイと引きずり込まれて、最後まであっという間の感じなのだが、聴き終わるとやっぱり「いつものロリンズ」なんだな。どっぷりジャズを聴いたなぁという満足感。ロリンズの場合、細かいことよりもこれが大事。自身のスタイルを最大限に発揮しているのはもちろん、かつ新鮮味をちょっとまぶすその 匙加減も実にいい感じ。というわけで、もう1回プレイ・ボタンを押しちゃうんだよね。  
それにしても1曲め、5曲め、6曲めの3曲ものソロで「おおスザンナ」を挿入するなんて。3度目は思わずコーヒーを吹き出したよ。3曲めにもちこょっと顔を出すんだけど、何か理由があるのか、それともウケ狙いか? 大巨匠はおちゃめでもある。これからもどんどんバリバリやってくれぇ。

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