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VICTOR JAZZ CAFE

2007年06月

熱帯JAZZ楽団 『熱帯JAZZ楽団 XI ~Let's Groove~』 2007年6月

2007.06.16 VICJ-61447

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Artist Review アーティストレビュー

全音楽ラテン化計画(?)──すべての音楽を飲み込む懐の深さ

「熱帯ジャズ楽団」は、ラテン・ビッグバンド。名前に「ジャズ楽団」とついているけど、聴いておわかりのとおり、いわゆる「ジャズ」にこだわってはいない。とり上げている曲は多種多様だけど、基本はラテン・ビート。ジャズのビッグバンド編成だからジャズともくくれるけど、印象としては大所帯ホーンズのラテン・バンドといった方がいいかな。とにかく体が動き出してしまう躍動感と熱さが特徴だね。なにより私マスターがまず魅力に感じるのは、この音楽の楽しさだね。理屈抜きに楽しい。それはとりもなおさずメンバーが楽しんでプレイしているということの証でもある。だからこそこの熱いサウンドは音楽ジャンル、年齢層を超えて熱烈に支持されている。どんな音楽ファンも熱狂させてしまうんだな。

 グループの歴史はもう長く、このアルバムは11枚目。世界ナンバー・ワンと評されたサルサ・バンド「オルケスタ・デ・ラ・ルス」を脱退したカルロス菅野(パーカッション)が、日本を代表するラテンとジャズの錚々たるメンバーを集めて1995年に活動開始。一気に注目を集め、活動の舞台は日本国内のみならず、アメリカでもライヴを行ない、アルバムもリリースされている。

 グループのウェブサイトにメンバー各人のプロフィールがあるけど、みんなリーダー級。よくスケジュール調整がつくなぁ、と他人事ながら感心するね。超実力派の集合体にもかかわらず、「音楽はエンターテインメントだ」をコンセプトに、聴衆を唸らせることよりは、ひたすら楽しませ続けてくれているんだけど、これって逆にすごいテクニックがないとできないことだよね。
 ちなみに、そんなスーパー・バンドにもかかわらず最初のアルバムは驚いたことに自主制作だったんだ。詳しい事情はわからなけど、想像するに、誰にも気兼ねなくメンバーたちがやりたいことを思いっきりやるというところから始まったんじゃないかな。(そのアルバムは今はビクターエンタテインメントから発売されています)

 演奏曲だけど、毎回意外なカヴァー演奏が入っているのが「熱帯」のユニークなところ。これまでのディスコグラフィー見ると、ラテンやジャズの名曲ももちろんやっているんだけど、毎度「おおっ!」というのが必ずある。このセンスも「熱帯」の幅の広さを表すところだね。

今回のカヴァーはどうかというと...、まずタイトル曲の「レッツ・グルーヴ」はアース・ウィンド・アンド・ファイアのカヴァー。ごりごりのジャズ・ファンだってきっと耳にしたことのある大ヒット・ディスコ・チューンだ。その名のとおりノリノリの曲なんだけど、それにラテンの味がついて熱さが大増量。「愛がすべて/Can't give you anything (but my love)」って、ジャズ・ファンは原題がほとんどそっくりの古いスタンダード(「捧げるは愛のみ」)と思うかもしれないけど、それじゃなくて、スタイリスティックスのあの曲。他にはアヴェレイジ・ホワイト・バンドの「ピックアップ・ザ・ピーセズ」、ロビー・ネヴィルの「セ・ラ・ヴィ」など、アルバム・タイトル『レッツ・グルーヴ』が表すように今回のカヴァーはダンス/ファンク・クラシックスが中心。

 で、意外なのは「エレガント・ピープル」。このオリジナルはウェザー・リポートだ。ウェザー・リポートって、小編成だけどシンセを使ってオーケストラを表現するグループという側面もあったんだけど、それをビッグバンドでカヴァーしたわけ。ウェザー・リポートのメンバーだったジャコ・パストリアス(ベース)もビッグバンドでカヴァーしたことがあったけど、当然ながらまるで違う。「熱帯」の躍動感は、このドラマチックな曲からまた新たな魅力を引き出している。どんな曲でもラテン化して自分たちの曲にしてしまうところがこのバンドの底力だ。

 ボーナス・トラック「セルベサ」はアルベルト・シロマのヴォーカルをフィーチャーしたごきげんな、もろサルサのナンバー。森村献(ピアノ)のオリジナル。時々出てくる日本語歌詞も楽しい。

 なんか「熱い」と「楽しい」しか出てこない紹介になってしまったけれど、そうなんだからしょうがない。ラテンのビートってのはさぁ...なんていうウンチクはこの音楽の前ではまったく野暮ってもんですから。もちろんウンチクに堪える深さもあって、それが「熱帯」のまたすごいところなんだけど。とにかく、まずは聴いて楽しむべし! だね。店で踊ってもいいよ。

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