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VICTOR JAZZ CAFE

2010年03月

『クラブ・ジャズ・ディグス・ルパン三世』

2010.03.10 VICL-63544

Artist Review アーティストレビュー

はい、今回紹介するのはオムニバス・アルバム『クラブ・ジャズ・ディグス・ルパン三世』。アニメ「ルパン三世」の楽曲を、「クラブ・ジャズ」シーンの精鋭たち(なんと日本だけじゃなくイタリア、フィンランド、ドイツというにぎやかな顔ぶれ)がカヴァーするという内容です。ふだんからクラブ・ジャズになじみのある人には「須永辰緒プロデュース」というだけで、もう他の説明はいらないでしょう。それほどのブランドなのであります。

一方、クラブ・ジャズになじみのない人にとっては、そもそもクラブ・ジャズって何よ?という説明から入らなければなりません。しかし、実はこれが難しい。まず、モダン・ジャズ愛好家に対しては、ここに収録されているほとんどが「60年代を彷彿させるファンキー・ジャズ」と言い切ってしまって全く問題がないと思われる音楽ですが、数曲は違います。モダン・ジャズのオムニバス・アルバムならきっと入らない。でも全部「クラブ・ジャズ」で括れます。つまりクラブ・ジャズというのは音楽演奏のスタイルではないのです。大雑把に言ってしまえば、「クラブという空間で鳴っている音楽」というところでしょうか(頭にジャズが付かない「クラブ」です)。鳴っていると書いたのは、それはDJのプレイ(レコードをかけることですね)もあり、演奏もありということで。だから流行もあるし、音楽スタイルで言えばサンバもボサ・ノヴァもファンキーも並列なのです。たまたま今回は生演奏のファンキー・ジャズが多かったということなのですね。だから他のクラブ・ジャズと銘打ったコンピレーション・アルバムを聴くと、ここで聴ける音楽とは全然違うスタイルだったりもします。

きちんとしようとすると余計判らなくなりそうだけど、モダン・ジャズ愛好家的視点とクラブ・ジャズ・アーティストのスタンスの違いを挙げてみます。感覚的にその差異が見えてくるかも。まず、モダン・ジャズ的視点では、演奏のリーダーは絶対に「演奏家」ですが、クラブ・ジャズでは違います。本アルバムのプロデューサー須永辰緒は「Sunaga t Experience」という名義で1曲参加してますが、このバンドで須永辰緒は演奏をしているわけではありません。そもそもこれはバンドではなく(トランペット、テナー・サックス、フルート、ピアノ、ベース、ドラムスの編成のファンキー・ジャズですが)「ソロ・ユニット」という扱いです。その音楽は「須永辰緒が提供した音楽」ということをまず評価するもので、(モダン・ジャズ愛好家が最も重視するであろう)ソロイストのアドリブ・プレイそのものは、その次かもっと後です。

という感じなんだけど、ファブリツィオ・ボッソ~マックス・イオナータ・クァルテットは立ち位置もまったくストレートなモダン・ジャズだから、このへんの整理の仕方はよくわかんない。と、まったく煮え切らない説明になってしまいましたが、最初に書いたように音楽スタイルそのものは「ルパン三世の楽曲をファンキー・ジャズでカヴァー」でほぼ括れるものなので、どんな「ジャズ」愛好家もとても楽しめます。クラブ・ジャズのことは一度忘れて(長々と説明したくせに)リスナーそれぞれの聴き方でどうぞ。

1. ルパン三世のテーマ/SOIL&"PIMP"SESSIONS
フロントはトランペット&テナー・サックス。激しいテナーのブロウからおなじみのテーマになだれ込むところがスリリング。急速4ビートのピアノ・ソロが印象的だ。メンバー名紹介します。これだけでもモダン・ジャズ・ミュージシャンとは立ち位置が違うことが感じられますよね。でも演奏はバリバリですよ。[社長(アジテーター) タブゾンビ(tp) 元晴(sax) 丈青(p) 秋田ゴールドマン(b) みどりん(ds)]

2. 非常線突破/ファブリツィオ・ボッソ~マックス・イオナータ・ クァルテット
イタリアより参加。ハイ・ファイヴ・クインテットのトランペッター、ファブリッツィオ・ボッソと人気テナー、マックス・イオナータの2管+オルガンとドラムスのクァルテット。

3. ルパン三世・愛のテーマ/EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX
日本語ヴォーカルです。ジャズ・フィーリングと歌謡曲的センスがこの曲にはぐっとくる。

4. ラブ・スコール/ロザリア・デ・ソーザ
ロザリア・デ・ソーザはリオ・デジャネイロ生まれのヴォーカリスト。軽めのサンバ調ビートにジャジーなギターがからむ。

5. ルパン三世のテーマ/ファイブ・コーナーズ・クインテット
フィンランドのクラブ・ジャズ・バンド。こちらもトランペット&テナーをフロントに据えた典型的なファンキー・ジャズ。なんか新録作品に聴こえないなあ。録音の音色も60年代を感じさせる(誉め言葉です)。

6. ルパン三世のテーマ/クリスチャン・プロマーズ・ドラムレッスン

クリスチャン・プロマー(プロデューサー)のソロ・プロジェクト。ピアノ、ベース、ドラムス、パーカッションの編成で、おなじみのメロディーをピアノが静かに繰り返していく。他のファンキー路線とはひと味違うクールな展開。

7. スーパーヒーロー/勝手にしやがれ
「勝手にしやがれ」は4管のセクションを含む7人組ジャズ・パンク・ロック・バンド。クラビネットのファンキーなリフから始まり、渋いヴォーカルが叫ぶ。スタイル的にはジャズというよりソウルだね。

8. サンバ・テンペラード/ジェラルド・フリジーナ
ジェラルド・フリジーナはDJでプロデューサー。トロンボーン、フルート、ピアノ、ベース、ドラムス、パーカッションという編成でラテン・ビートのジャズ路線。

9. ルパン三世のテーマ/Sunaga t Experience
DJでプロデューサーの須永辰緒によるソロ・ユニット。トランペット、テナー・サックス、フルート、ピアノ、ベース、ドラムスの編成で、60年代ファンキー・ジャズまっしぐら。終盤に銭形警部の語りがサンプリングされて入っている。ここまで「ルパン三世のテーマ」は全部で4トラック。もはやスタンダードだ。

10. 炎のたからもの/TRI4TH トランペット&テナー・サックスがフロントのクインテット編成。アーティスト写真を見ると着流しだったり、腰パンだったりするけど、音はまっとうなモダン・ジャズであります。

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