
5月リリースの『青い影』は、ヘイリー・ロレンの日本での初めてのアルバムなんだけど、すでに彼女の名前を知っている人は、けっこう多いんじゃないかな。というのは、彼女のサイトを見るとmyspace、facebook、twitter、Youtube、さらに日本語フェイスブックにもリンクがあって、それぞれでどんどん情報を発信しているから。それを受けてか、無名の新人にもかかわらず、日本のブロガーたちの紹介もよく目にするしね。
彼女はアラスカ生まれ。ローティーンの頃にオレゴン(西海岸カリフォルニアの北隣)に移って、15歳からプロ活動。2006年、21歳でアルバムを発表。これまでインディーズ(だけ)でアルバムをリリースし、現在もオレゴンを拠点にしているジャズ・シンガーだ。この評判を遠く離れた日本のレコード会社がキャッチして、アルバムをリリース。また、耳の早いリスナーが絶賛してブログで紹介なんて、一昔前には考えられなかった状況じゃないかな。何もニューヨークで歌っていればいいというわけではないけど、彼女のような地方のミュージシャンでも、情報発信の力があればその歌声は世界中の届くべきところにちゃんと届くということだね。
もちろん彼女の場合は実力があるからこそ、その先があったわけで、もともとインディーズでリリースしたこの『青い影』は、2009年のJust Plain Folks Music Awordsのベスト・ヴォーカル・ジャズ・アルバムを受賞している。この賞はさまざまな部門があるけれど、インディーズ・アルバムへの賞とはいえ、世界163カ国4万2千タイトルのアルバムが対象なのです。そこそこメジャーな賞よりも、よほど実力の証明になりますよね。というわけで、その時点(昨秋)ですでに一部輸入盤店で話題になるなど(一部ではハリー・ローレンと表記されていました)注目を集め、そして、そこに4曲のボーナス・トラックを追加したものが、このたび日本発売の『青い影』なのです。
とにかくうまい。余裕たっぷり。表現がとてもナチュラルなんだな。かといって素直過ぎて全然飾ってないというわけではなくて、きっちりと考えた上でのナチュラルさとでも言うかな。収録されている曲は「枯葉」をはじめ、「サマータイム」「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」のジャズ・スタンダードや、プロコル・ハルムの「青い影」やオーティス・レディングの「ドック・オブ・ザ・ベイ」といった曲もある。オープニングに収録されて米盤アルバム・タイトルになっている「ユー・オウタ・ライト・ア・ソング」は彼女のオリジナル。といったように元曲はいろいろでも、とても統一感がとれているのもすばらしい。
本人が書いたのではないだろうけど、サイトのプロフィールに「××(実際は実名)のような当たり障りのないジャズでも、ショッピングモールの眠くなる歌でもない本物の音楽を…」(大意)というくだりがあって、「おおっ」と感じましたね。これ、音楽に表れてます。
日本盤には4曲のボーナス・トラックが入っているんだけど、これがまたすばらしい。ライヴなんだけどスタジオ録音の本編になんら遜色のない出来映え。彼女の実力がさらに本物だと感じさせてくれるすばらしいパフォーマンス。彼女のサイトでスケジュールを見ると、地元でのライヴ・スケジュールがびっしり。共演の多くはアルバムに参加しているマット・トレーダー(p)やマーク・シュナイダー(b)ら。アルバムもライヴも「いつもの」人たちなのね。アルバムの「いい感じ」はそのあたりも理由なのだな。このボーナス・トラックはお得ですよ。